東京大学先端科学技術研究センターシニアリサーチフェローとなった中邑賢龍先生の講演会「発達障がいのある人のユニークさを生かす支援とは」に参加しました。
コロナ禍に入り、オンライン研修を受けることが多かったのですが、生身の賢龍先生の講演は、障がいの有無に関わらず、子どもに対する私たち大人の働きかけを、考えさせられる内容でした。
医療型障害モデルからの脱却
・出来ないのは、訓練が足りないからではない。
・一人一人の個性を尊重し、子どもたちが楽しく伸び伸び過ごせる空間作りを確保したい。
・治すのではなく、人が伸びる場を提供していきたい。
効率重視の多様性なき社会
・知識や協調性を重視される世の中だと、使いにくいもの(効率が悪い・信頼性が低い)は、
淘汰されていく。
・そうなると、ユニークな人たちは、排除されやすい。
・発達障がいの子どもたちは、効率を無視していることが多い。
・便利な世の中を生きていると、レジリエンスが弱くなる。
・実は、使いにくい不便な世の中の方が、人間力を育てる。
信頼関係を築いてからこそ、支援ができる!
・大人の側から「○○した方が良い」と伝えても、子ども本人が納得しないと、事は進まない。
例)賢龍先生は若かりし頃、不良と呼ばれる勉強が苦手な子どもの家庭教師を任されたのだそうです。
「勉強をやろう」という声掛けで、素直に応じる子どもではなかったお子さんに対し、どのように接すればよいか?賢龍先生が関係づくりの為にとった対応は、とにかく一緒に遊びまくること。
1年間とにかく遊びまくって、ようやく「そろそろ、勉強を教えて欲しい…^^;」という関係になれたのだそうです。この例え話からも、子どもと信頼関係を育むのにも、本当に時間とエネルギーを要するものだと思いました。
時間をかけて関係づくりを行い、一緒に本気で感情を分かち合う体験を通してこそ、失敗や挫折をした時のフォローができるのかもしれません。
Learn projectの紹介
Learn projectでは、発達障がいや肢体不自由などの多様な発達特性を持つ子どもたちに、様々な体験を通してrealを実感してもらう活動を行っています。実際の活動紹介動画もいくつか紹介して頂きました。農家に出向いて働き、働いた分だけ現物支給で配給してもらい、その食べ物のありがたみを感じる。阿蘇山を背景として、緑豊かな草原に寝転がってバイオリンの演奏を聴くなどの体験は本当に羨ましい限りだと思います。その他には、目的地に与えられた金額で、皆で予算や対策を考えながら出向き馬を捕まえ、トラクターの力の凄さを体感するなど。日常生活では、なかなか育む事の出来ないrealを体験するという内容でした。多様性という特徴を有した子どもたちだけでなく、一般の子どもたちにもぜひ参加してもらいたいと思う活動でした。Learn projectにご関心がお有りの方は、こちらをクリックしてください。
さいごに
「便利な世の中が、人間力を弱める」という事を知らされると、私自身、迷って考えが定まらなくなります。というのも、子どもたちを支援するツールとして、タブレットを多いに活用していますし、様々な学習やブログなどで発信することができているのも、これらの便利なツールがあるからです。
未来予測に関する書籍を読むと、生活を便利にする進化は止まることがなく、進化し続けるであろうことが推測できます。
自分なりに考えて導き出した答えは、
・畏れて使用を避けるということではなく、情報を知り正しく扱うこと。
・自分にとって良しと思えるツールでも、保護者に無理強いはせず、子どもたちが使用してみた際の反応を共有していく。
・子どもには、始めからツールの扱いに対してルールを決め、状況により制限も検討する。
まだまだ、学びが必要だと感じた研修でした。
〜こみゅばんばん〜
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