吃音についてご相談を受けることが、しばしばあります。
関連書籍や最近の動向のまとめです。
吃音とは
滑らかに話すことができない流暢性の障害とされており、DSM-5の診断名では「小児期発症流暢症」とされています。言語症状としては、主に下記の3つがあります。
❶連発(語音の繰り返し)
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼく」のように、語音を繰り返します。
❷伸発(語音の引き伸ばし)
「ぼーーーーく」のように不自然に引き伸ばします。
❸難発(語音のつまり)
「………………ぼく」のように、語音が詰まって出なくなります。
*吃音の悪化に伴い随伴症状(ことばを出そうとして、口や舌や喉など力が入り不必要に動いてしまうこと)が見られることもあります。
吃音の割合と男女差
・幼児期:5〜8% (13〜20人に1人)
・学齢期以降:1% (100人に1人)
吃音が初めて出現する「発吃」は、ことばが爆発的に増加する2〜4歳くらいが多いようですが、個人差もあり学齢期以降という場合もあります。
幼児期に発吃した子どもの8割程度は、小学校低学年までに自然に消失することが知られています。これを「自然治癒」と言います。
男女比は、幼児期で1〜2:1、学齢期以降で3〜5:1、年齢を経るごとに男児の方が高くなります。
吃音の原因
1990年以降、遺伝研究、脳の機能的画像研究などの急速な進歩により「吃音は生まれ持った体質的要因と環境要因が複数関わって生じる」と仮定しています。DSM-5では、「神経発達障害群」のグループに属される診断名となっており、脳の働き方が関与しているということを表しています。
吃音頻度を軽減させる方法
吃音症状が0となる方法は、歌を歌うことです。
遅延聴覚フィードバック(DAF)による引き伸ばし発声も効果があります。
通常の半分程度にゆっくりと話すことや斉読(他人と一緒に音読したり発声したりする)も効果があります。
吃音は「話し始めの内的タイミング障害」とも言えます。
これら以外にも吃音を軽減させる方法はいくつかあるのですが、
一歩訓練室から出ると、効果が薄くなるという現実もあります。
以前に、高校生の吃音患者さんを数回ほど対応させて頂いたことがあります。
訓練室内では、「今までより、滑らかに言える!」という実感が得られたようですが、
いつもの社会生活の場に戻ると「応用が難しかった」と
おっしゃられていました。リハビリ最終日に語られたのは
「吃音は治らなかったけど、今までよりも滑らかに話しやすくなる
方法が理解できたのと、吃音があっても私は私ですね!」と
ご自身を肯定され笑顔で部屋を出て行かれたのが印象的でした。
吃音のある子どもの保護者様へ
以下の声かけは望ましくないと言われています。
・「ゆっくり話しなさい」
・「落ち着いて」
・「深呼吸しなさい」etc
上記のような声かけは、
「あなたの話し方が悪いから、吃らないようにしなさい」と
伝わってしまいます。
吃音症状があってもなくても、
必要以上に焦らず「うんうん」とゆっくり
話を聞いて頂ける環境が理想です。
親が吃音に対して負い目を抱いていると、
その気持ちは子どもにも伝わり、
自己肯定感を下げることにも繋がります。
子どもは焦れば焦るほど、症状が出やすいものです。
なので、話を聞く側も、
ゆっくり聞いてゆっくり話すように
意識できると良いかもしれません。
最後に
吃音の当事者である小林宏明先生が、TEDで「吃音について」語られていました。
小林先生は金沢大学で教授をされていて
吃音患者さんの支援を積極的になされています。
以前に小林先生の勉強会にも参加させて頂きましたが、
その時よりも、先生ご自身の吃音症状が軽減されている
ように感じました。
興味・関心があられる方は動画をご参照ください。
何らかの前向きな刺激となれば嬉しいです。
小林先生が吃音ポータルサイトを運営されています。こちらも、参考になるかと思います。
参考図書「イラストでわかる子どもの吃音サポートガイド」著者:小林宏明
「エビデンスに基づいた吃音支援入門」著者:菊池良和
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