『AI vs.教科書が読めない子どもたち』で伝えたいこと

AI ICT関連

 2019年にビジネス書大賞受賞したこの書籍、以前から読まなくてはと思っていましたが、ようやく本書にありつきました。今回は、その概要についてのまとめと自分の思いです。

人工知能の発展と限界

 皆さんは、シンギュラリティという言葉を耳にした事がありますか?
シンギュラリティ」とは人工知能(AI)が人間の能力を超え、社会に大きな影響を及ぼす事だそうです。この本の著者である新井紀子先生は、講演会に出かけると聴講者より「シンギュラリティは未来に生じるのか?」と言う質問をしばしば受けたそうで、その応えは決まって「絶対にあり得ない」の一言だそうです。

 新井先生は、人工知能(AI)の限界を把握する為、2011年より東ロボプロジェクト(人工知能で東大に合格するプロジェクト)を開始し、最終的に偏差値57まで到達し、このプロジェクトを終了しました。「人工知能(AI)が、東大に合格する事は不可能だ」と結論づけたのは、以下の理由からです。

 人工知能(AI)は、基本的に四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)からなる計算式の結果であり、我々人間のように状況や文脈から文章を読み取って意味を理解できる存在にはなりえないことを主張されています。東ロボくんは、数学や歴史などの科目で高得点を取れた一方、国語や英語などの文章を理解して回答を導き出す課題で得点を得る事が困難だったのです。ただし、そのように文章理解がうまく把握できない人工知能であるにもかかわらず、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政の5大学)の合格判定は貰えるレベルにまで到達したのだそうです。

20年後になくなる仕事トップ25

今後、以下の仕事は人工知能(AI)に置き換わっていくと記されていました。

1電話販売員(テレマーケター)
2不動産登記の審査・調査
3手縫いの仕立て屋
4パソコンを使ったデータ収集・加工・分析
5保険業者
6時計修理工
7貨物取扱人
8税務申告代行者
9フィルム写真の現像技術者
10銀行口座開設担当者
11図書館司書補助員
12データ入力作業員
13時計の組立・調整工
14保険金請求・保険契約代行者
15証券会社の一般事務員
16保険金請求・保険契約代行者
17(住宅・教育・自動車ローン)融資担当者
18自動車保険鑑定人
19スポーツ審判員
20銀行窓口係
21金属・木材・ゴムのエッチング・彫刻業者
22包装機・オペレーター
23購入アシスタント
24荷物の発送・受け取り係
25金属・平削り盤のオペレーター

*逆に「20年後も残る可能性の高いトップ25」も気になりますよね。関心があられる方は、是非とも、ご自身で調べてみてください。ちなみに、残る可能性の高いトップ25の中で、現在の私の職種(言語聴覚士)は、5位にノミネートされていました。AIが困難な業務というのは、計算式のように答えが定まっていない”人”に関する育ちや心理面などのサポートなのかもしれません。

読解力調査(Reading Skill Test)

 新井先生は、東ロボプロジェクトをきっかけに、RST(読解力を診断するテスト)を開発し、協力校に対して、全国的に調査を実施しています。(RSTに関する詳細はコチラをクリックしてください。)そこで、子ども達の読解力(文章に書かれている意味を正確に捉える力)が予想以上に身に付いていなかったことに愕然としたそうです。今後、AIの浸透が著しい世の中で生き抜く為にも、子どもたちに、身につけて欲しい事は、中学生までに習う教科書の内容をしっかりと読み解き、論理的思考を深めて欲しいと言われています。そうする事で、AIに仕事を奪われるのではなく、共存しうる世界を作り上げていくことができるのだとか…。

数学は言語である

 私は、からっきし数学が苦手で、数学や物理の勉強を断念した私立文系タイプです。
 新井先生は、数学は単なる計算式ではなく、森羅万象を記述できる言語であると言われます。言葉の育ちをサポートする私の立場として、「数学=言語」という捉え方は、目から鱗の発想でした。今は、その考えに感化され、改めて数学を学び直したいと思っています。有難いことに、我が家には小学生の子どもがいます。今更ではありますが、子どもたちと1から数学の勉強を頑張りたいです。そこで、論理的思考(筋道が通った考え方)を親子で深めていけたら、今よりももっと自分に自信が持てるはず。今は、授業にもプログラミングが取り入れられており、ICT機器の導入が始まっていますが、大切なことは「プログラミングができることよりも、どのように考えて取り組めば、より分かりやすくシンプルな結果が導き出せるかである」と「シンデジタル教育10年後、我が子がAIに勝つ為に必要なこと」著者:松林弘治氏も語っています。子どもに一方的に「○○しなさい。」と叱咤を繰り返すよりも、親や大人が粘り強く頑張り達成感を楽しむ姿勢を見せていく事で、子どもも頑張らなければと学んでいけるようになるのだと、どなたかが語っていました。

 苦手だと思っていた分野も、必要だと感じた時に、学び直しできるのだと信じて前に進むのみです!

参考図書「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」著者:新井紀子
著者プロフィール 新井紀子(あらいのりこ)
国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長
一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長
一橋大学法学部、イリノイ大学数学科卒業

コメント

タイトルとURLをコピーしました